村上龍::ラブ&ポップ~トパーズ2~

援助交際が流行していた時期は経験せずに、銀杏BOYZの歌でえんじょーこーさいーとギャーギャー喚いてたので別に大したテーマじゃないと思うのですが、この小説が話題を呼んだのは、お金に困っていないはずの女子高生が、手をつないだり、ご飯を食べたり、ときにはカラダの関係をもって高額なお金をもらってるらしいよ!なんでなんで??といった大人たちの狼狽を「こんなカンジじゃないの?」と、女子高生にインタビューしまくった村上龍が小説にしてしまったので衝撃的だったからのようです。それを自慢げにあとがきに書いている村上龍がキモい。
で、その援助交際にはまったくリアリティが感じられないので、いつも通り穿った見方をしてみた結果でてきたキーワードが"大切なものは手に入らない"です。

去年の夏、『アンネの日記』のドキュメンタリーをNHKの衛星放送で見て、怖くて、怖くて、でも感動して、泣いた。次の日の午前中、「バイト」のため『JJ』を見ていたら、心が既にツルンとしているのに自分で気付いた。『アンネの日記』のドキュメンタリーを見終わって、ベッドに入るまではいつかオランダに行ってみようとか、だから女の子の生理のことを昔の人はアンネっていうのか、とか、自由に外を歩けるってことは本当は大変なことなんだ、とかいろいろ考えて心がグシャグシャだった。それが翌日には完全に平穏になって、シャンプーで洗い流したみたいに、心がツルンとして、「あの時は何かおかしかったんだ」と自分の中で「何かが、済んだ」ような感じになってしまっているのが、不思議で、イヤだった。P.57

この文章は主人公が指輪を手に入れるために援助交際を決意する場面の独白です。
この言語化できない曖昧な感覚ってのは何度か味わったことがあるのだけど、同じように「何かの勘違いかな?」と思って忘れてしまう。この輪郭をギリギリのラインで描ききっているのがすごいと思う。
実在の女子高生がなぜ援助交際をしたのか、という明確な理由はいつもながら、みんな同じわけないだろマスコミのアホめと示されてました。誰にも迷惑をかけないから構わない、というのが彼女達の主張で、それを言われた人々は反論できない。みんなも同じコトを考えてるってことですね。
なにが言いたいのかわからなくなってきたのでもう一度書いておしまいにしておく。
大切なものは手に入らない。

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

ラブ&ポップ―トパーズ〈2〉 (幻冬舎文庫)

  • 画像が表示されなかったから写真撮った。色が綺麗で好き。
  • いつもながらラストがカッコよすぎて息が漏れた。なんてオッサンだ。
  • なんで援助交際って死語になったのかね、大人に余裕がなくなったから?そのときの世代特有だから?
  • 結局のところ自然消滅ですよねー。大人はなんの解決策も見い出せていない。それは僕らも同じだと思いますが。
  • 誰にも迷惑かけてないんだからいいじゃん。
    • 力を持った小学生は恐ろしい。